宮崎駿さんのエピソードから学ぶ、よく見て描く為の指導方法のヒント[11月のアトリエ計画]         

 秋らしい澄んだ空気を感じる季節になりました。今年は金木犀の時期があっという間に過ぎてしまったように思います。教室に来る子たちのいも掘りやハロウィンの話や修学旅行や宿泊学習の話を聞いて季節の変化を感じたり、もうそんな学年になったんだなあと感慨深い思いでいます。

 さて先月は「よく見て描こう」というテーマで小学生は静物画に取り組みました。鳥と蝋燭、果物とガラス瓶を描きました。低学年の人にとっては少し難しいかもしれないと思っていた内容でしたが、よく見る為の見方を話した事で思っていたよりもずっと集中した制作が出来ました。みんなの真剣な眼差しで描く姿が印象的でした。今月は12月の影絵会へ向けてのグループ制作に入ります。

《よく見るとはどういうことか》

 よく見てね。というと子供たちはどんな反応をするでしょうか。とにかく並べられたモチーフに視線を向ける人、いたずらっぽく目を大きく見開いて顔をモチーフに近づけて見ているよというアピールをしてこちらの様子を伺っている人、もう見たから早く描きたいとうずうずしている人。

 見るという行為には沢山の見方があり、大きく分けると2つの見方があると思います。tvや映画を見たり過ぎ去る風景を見たりするような受け取る見方(受動的)と、じっくりと観察してその特徴や細かな変化に気づくような自分から情報を掴みにいく見方(能動的)です。

 静物画を描く時に必要な力は後者の能動的に見るという事が必要になります。中学生以上いなると自然と絵を描く時の見方が出来てきますが、小学生に能動的にみる、観察するようにみる事を伝えるにはどうすれば良いでしょうか。

《宮崎駿さんの見方を真似する》

 私は良く小学生に静物画を描いてもらう時、初めに自分の席から見えるモチーフの形を指でなぞってもらいます。すると自然と視線でモチーフの形をなぞることになります。こうすると大まかな全体のバランスを観察する事ができます。

 さてもう一つ踏み込んでさらに細かく観察するにはどうしたらいいかと考えた時、あるエピソードに出会いました。それはジブリの宮崎駿さんがアルプスの少女ハイジのロケーションハンティングのためにスイスに行った時、他のスタッフが写真を撮ったりスケッチしている中、駿さんだけはじっと風景を見ては目を閉じてイメージするという事を繰り返していた。というエピソードです。おそらく見たり描きとめることで満足してしまいがちな見るという行為を、あえて見るだけにする事でアルプスの風や光や匂いといったイメージ共にしっかりと脳裏に焼き付けていたのではないかと思います。

 子供たちにこの目を閉じてイメージする、そして曖昧なところに気づいたら目を開けて確認するという事をしばらくやってもらうと、よく見ていても捉えていない事があることに気づいて、目を開けたり閉じたりしながらよく観察していました。描いている最中でも曖昧な箇所に出会うと目を開けて確認する時のようにまたじっとモチーフに視線を注いでから描くという事ができていたように思います。

 またもう一つの提案としては、よく見て気づいた事を言葉にするという事です。どうなっているか言語化しながら見るとただじっと見るよりも描くという事を意識して見る事ができます。

《意識すると見えてくる》

 わたし自身子ども達と一緒に静物画を描いていると、普段アトリエに置いてあるモチーフを改めて描く対象として見ると「ここはこんなふうになっていたんだ。」という発見がたくさんあります。意識して見る事で今まで捉えていなかった事がどんどん見えてきます。 

シュタイナーは感覚は世界と出会う道具と唱えましたが、絵を描く事で能動的によく見る力がついてくることはなにかしっかりと自立した態度で新しく世界に出会う行為のような気もしてきます。

11月の予定  『水彩・影絵』

 月曜クラス 4・11・18

 火曜クラス 5・12・19

 水曜クラス 6・13・20