・美大受験体験記4 総合型選抜・推薦型選抜の実技対策
・美大受験体験記5 合格者の声
こんにちは 美大受験を考えている高校3年生、その他の受験生の中で総合型選抜試験に挑戦しようとしている方々へポートフォリオの作例を紹介します。総合型選抜試験とは少し前まではAO入試・自己推薦と呼ばれていた受験方法です。希望する大学で自分が学びたい理由、今どんなことに興味を持っていて、希望大学の特性を活かしてどんな事を学んでいきたいと考えているかを明確にして自己PRをする必要があります。
その方法として、ほとんどの総合型選抜試験ではポートフォリオ(自分の作品集)や自己PR用紙の提出が求められます。今までの作品や活動、自分の考えや興味をまとめます。といっても高校生やこれから大学で学ぼうとしている人のほとんどは、これから学びたい事を探そうと思っているのですから何をまとめてアピールしたら良いのだろうと悩む方がほとんどだと思います。
H.hさんもスタートは同じでした。しかし作品をまとめる中で自分の興味の方向性を明確にして、さらにポートフォリオに入れたい作品を追加制作する中で大学で学ぶことの意義をしっかりと持って受験に挑むことが出来ました。むしろこのポートフォリを制作がたくさんの気づきを与えてくれたように思います。
これから紹介するH.hさんは昨年都内の美術大学に総合型選抜試験を通して見事合格、この春から美術大学で学んでいます。先日アトリエに夏休みで遊びにきてくれた彼女は物を作る人としての軸をしっかりと持ち、時に悩みながらも大学での学びを思い切り楽しんでいる様子で本当に生き生きとしていました。
そんなH.hさんの許可を得て昨年(2022)製作したポートフォリをを公開します。当時のことを振り返りながら解説していきますので、是非みてみてください。これからポートフォリオを制作する人にとってきっと何かヒントになることがつまっていると思います。
はじめに
ポートフォリオの制作者H.hさんはファッションに興味があり、ファッションについて学ぶことができる都内美大の科を探して広くファッションやデザイン・美術について学べる武蔵野美術大学 空間デザイン学科を受験しました。彼女は服作りというよりも社会の流れも含めたファッションに興味があり、いつか自分のブランドが作れたらいいなと考えていました。
しかし服作りは高3の夏の時点でほぼ未経験、部活も運動部だったので高3春の時点での作品数は[高校の学校内制作でポートフォリオに使いたいものは1点]というところからのスタートでした。そこでポートフォリオ制作の中では服作りの過程もまとめていきました。8月から9月にかけての1ヶ月半ほどの期間で本当に頑張ってまとめたポートフォリオです。
パソコンでの画像取り込みやまとめ方に不安があったため、あえてスクラップブック風に手書きでまとめていきました。タイトルやコメントの差し込み方、背景色へのこだわりなど後半になる程センスが光るまとめ方に彼女の才能を感じます。
表紙の工夫・美大を目指すきっかけとなった作品・近年の作品⑴










表紙と目次は一番最後の段階で作りました。二次試験へ発つ前日まで表紙と目次に手を加えていて、田舎で材料が手に入らないと連絡をもらって、教室に残っていたミラーシートを届けたのもいい思い出です。
ポートフォリオを制作する中で表紙をどうするかは迷うことの一つだと思います。ポートフォリオはまず興味を持って教授に手に取ってほしい。そんな思いからファイルの表紙に手を加えたいと考えました、、でももう時間がない!そんな中で彼女が思いついた名案が「白色半透明のファイルを使う。」でした。これならファイル1ページ目に表紙を差し入れればファイルを閉じても透けて表紙が見えます。そして沢山手を加えた表紙が破損してしまう心配もありません。応用としてはカラーの透明ファイルやファイル自体の表紙を切り絵のように切り抜いたり、カラーを重ねたりして工夫できるかもしれません。
H.hさんの場合はファッションに関する興味を軸にまとめていったポートフォリオだったため、表紙は布や自作の羊毛フェルト、刺繍などを利用して手作り感が素敵な表紙を作り上げました。
1番大事なのは「中身」です。でもできるなら自分の大切なポートフォリオの第一印象「表紙」にもこだわりたいですね。ちなみに彼女の面接時の報告からは、大学教授の方々が丁寧にポートフォリオに目を通して下さっていることが伝わってきました。ですので見てもらえないかもしれない。という心配は無さそうです。しかしこの時は沢山並んだファイルの中からどうかこの力作ファイルを見逃さないでほしい!そんな思いで魅力的な表紙を作る方法を考えていました。
表紙の後には彼女が高校1年生の1年間かけて高校のゼミで描いた模写とその研究報告。この作品制作の楽しさと興味が美大を目指すきかっけとなったそうです。つづいてこのアトリエでのモネ模写・抽象画制作や、自宅で自由に制作した作品です。作品の説明は後からページとページの間にメモ用紙を透明テープでとめてつけ足しています。作品のキャプション(タイトル・サイズ・制作年・画材)は必須ですので必ず明記してください。
1次課題と2次課題の制作過程とまとめ⑵



8月に制作した1次試験に郵送した課題(自分の投影された空間を表現しなさいB4サイズ)の制作意図をまとめています。ちょうどポートフォリオ制作の開始と同時進行だったので、美術へ興味を持つきっかけとなった制作との共通点にも気付くことが出来ました。1次試験の課題制作時には2次試験へ進めるか分からない状況です、しかしながら2次試験でこのポートフォリオの提出が必要になる事を想定して制作の記録をとっていきました。
2次試験では面接・感覚テスト・ポートフォリオ提出・自由課題の作品提出があります。自由課題に「自分で考えた制服の制作」というテーマを決めた彼女は夏の間に何度もアトリエへ来て草木染を一緒にしました。新学期が始まると染めた布を持って家庭科の先生に相談しながら服(制服)の制作に取り掛かりました。ポートフォリオでは草木染めの過程と試行錯誤、制服を作ることにした意図について丁寧にまとめられています。
中学校・高校での活躍をまとめる クラスTシャツや文化祭のポスター⑶









H.hさんは学校生活の中で文化祭や体育祭のポスターやクラスTシャツの製作に立候補して意欲的に関わってきました。このような活動が美大受験に役立つとは思ってもみなかったことでしたが、彼女との会話の中で学校での活躍を知っていたため、是非ポートフォリオに活かそうという事でまとめることになりました。
そのほかにも私生活の中でお友達にプレゼントする為に制作したクラフトの数々や何気なく書いたイラストなどが集められたページが作られています。制作の1つ1つは小さなものですが纏まった数が集まると彼女の人となりや、生活の中で自分で生み出したもので他人や自分を豊かにすることができるものづくりに対する姿勢が伝わってくる素敵なページになっています。
1番大切な興味を掘り下げるページをつくる ファッションについてのページ⑷









1から3までまとめてきて、ポートフォリオの内容に何か物足りなさを感じていた彼女は、これから自分がやりたいことにを見据えてさらに作品を追加で制作することにしました。それは彼女の夢、「自分のブランド」の洋服デザイン画を描き溜めることでした。
ここまで纏めるのも大変な作業だったのに更にこんなワクワクするような計画を思いつく彼女には脱帽です。時間もあまりない中で1週間ほどコツコツと毎日描き溜めたデザイン画がテーマごとにまとめられています。地元の手芸屋さんで集めてきたハギレからイメージしたデザインとそのまとめ方は見ていても楽しく、想像力が刺激されるページになりました。結果として、ポートフォリオ制作時の彼女の理想がギュッと詰まった最も重要なページになったと思います。
ブランドロゴや当時H.hさんが興味のあったファストファッションの魅力についての考えがまとめられているのもとても重要なページです。
受験のために勉強した作品 美術研究所での取り組み⑸



最後のページには春と夏に美術研究所に通って一般受験のために制作したデッサンと色彩構成の作品をまとめています。総合選抜で合格を勝ち取った彼女はデッサンや色彩構成の力を受験で発揮するチャンスは無かったのですが、美術研究所で感じた美大受験生たちの空気感や講評での先生方の言葉は触れることが出来て良かったと話してくれたのを覚えています。そんな受験への決心と本気が垣間見えるページになっています。
まとめ⑹
5で描いた一般受験対策のための作品はどれも完成度が高く、直近のしっかりとした作品群です。このページをどこに持ってくるかH.hさんから相談を受けた時、私は「最後に持ってきたらどうかな。」と答えました。なぜなら前述のこれまでの彼女の作品の数々は完成度で言えば受験対策のものより低いものもあるけれど、完成度よりもずっと大切な制作者本人の興味とこれからの可能性が伝わってくる作品たちでそのことはポートフォリオを作る上で最も大切にすべきことだと考えたからでした。
H.hさんは3年生の春の時点で元々たくさんの作品をもっていた上で始めたポートフォリオ制作ではありませんでした。だから美術に興味をもったきっかけから始まり、これからどんな作り手になっていきたいかを重点的に考えながらまとめられたポートフォリオになりました。そうであったからこそ、このポートフォリオ制作は自分の興味の行き着く先を見据えながらそれを明確に洗い出していくような充実した制作になり本当に意味のある時間だったように思います。
もし同じように美大の総合型選抜試験に挑戦したいけれど今までの作品数が少なくて悩む受験生がいたら、自分の興味や理想(これからのこと)に焦点をあてて掘り下げていく事を目標に定めてポートフォリオを作っていったらいいと思います。そうすると新たに作りたいもの、調べてまとめてみたいことが出てくるかもしれません。サイズの大きな大作や完成度の高い優れた作品でなくても、今1番創ってみたいものを造ってみてください。その動機や過程をしっかりとまとめてみてその制作を軸にまとめていくと良いです。もちろんこれはあくまでも1例と1提案であって、あなたのやってみたい方法があったら是非それをやってみたらいいと思います。
総合選抜試験は夏休みが明けたらすぐです。夏の間じっくりと自分の興味と向き合ってみると何か見えてくるかもしれません。短い時間でまとめるのは、本当に大変なことだと思いますが応援してます。きっと意義ある制作時間になりますように!
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