「何を作ろう?」から始まる自由制作
10月のアトリエでは、子どもたちが思い思いの作品づくりに取り組む自由制作を行いました。
段ボールを組み合わせた立体作品やフェルトのアクセサリー、プラ板のキーホルダー、粘土による造形など、それぞれが自分の興味に向かって制作を進めました。
その中で印象的だったのは、作品を作り始めるまでの時間です。
すぐに手を動かし始める子もいれば、「何を作ろう」とじっくり考え続ける子もいます。周りの様子を観察しながら、最後の日になってようやく制作を始めた子もいました。
どんな取り組み方も、その子らしい制作の時間です。
悩む時間も、大切な制作
自由制作では、「何を作るか」を決めることが、一番難しい場面かもしれません。作品の作り方を考えたり、自分が本当に作りたいものを探したりする時間には、完成までの制作と同じくらい大きな意味があります。
毎日の生活では、目の前のやるべきことをこなすだけで精一杯になることも少なくありません。だからこそ自由制作の時間が、「私は何を作りたいのだろう」「何に心が動くのだろう」と、自分自身に問いかける時間になっていたら嬉しく思います。
創造力の土台は「知ること」
子どもたちの制作を見ていると、創造力の土台になるのは「知っていること」なのだと改めて感じます。
例えば、素材があっても、その素材で何ができるのかを知らなければ、そこから作品を思い描くことは難しくなります。道具も同じです。使い方を知っているからこそ、「こんなことにも使えるかもしれない」と発想が広がっていきます。
つまり、創造力は何もないところから突然生まれるものではなく、素材や道具と出会い、実際に触れ、試した経験の積み重ねの上に育っていくものなのです。
そして、その基礎があるからこそ、子どもたちは既成概念にとらわれない組み合わせや、新しい使い方を思いつきます。
アトリエでは、時には足りない材料や道具までも自分たちで工夫して作り出し、制作を発展させていく姿を見ることがあります。その柔軟な発想には、いつも驚かされます。
「絵は教えられない」と言われるけれど
美術教室をしていると、「絵は教えるものではないでしょう?」と聞かれることがあります。
私も、一人ひとりの表現そのものを教えることはできないと思っています。表現は、その人の内側から育っていくものだからです。
けれど、絵の具や素材にはどんな特徴があるのか、道具をどう扱うと表現の幅が広がるのか。そんなことを一緒に楽しみながら経験することはできます。
また、子どもたちの想像が広がるような素材や作品、自然との出会いを用意したり、新しい視点につながる問いかけをしたりすることもできます。
表現そのものを教えることはできません。
でも、表現が育っていくための土壌を耕し、子どもたちが新しい世界に出会うきっかけをつくることはできる。
それが、美術教室で私が大切にしている役割だと考えています。
そして子どもの創造力を育てる為にもう一つ大切な事があります。それは「あなたは、この世界をどうみるのか。」という事です。これは一人一人の個性の部分です。もちろん「このように見なさい。」と教えられるものではありません。しかし、自分の目と感性を通して深く見るということを伝えることはできるのです。そのことについてはまた機会に書こうと思います。

