6月のアトリエ計画《絵画展の受賞作品はいい絵?選ばれなかった絵はよくない絵?》

 紫陽花の花が咲き始めて、今年の梅雨ももうすぐそこかなと思っています。皆さんお元気ですか。4・5月うみ、なみクラスで取り組んできた「ガォーと叫んだら」の制作が完成し持ち帰る事ができました。今まで描いた事がない切り口で動物を描いてみようという試みで、叫ぶ動物を描きました。今回は背景も叫ばせてみようと、フィンガーペイントで思い切り表現しました。可愛い動物の方がいいなという子もいましたが、始めに読んだ田島征三さんの「ガオ」をとても楽しんで味わいそれぞれ新しい表現に挑戦した制作になりました。

《作品の評価は上手いかどうかではない》

 さて、今回の作品が完成して鑑賞会の時間をとった時のことです。「先生、1番いいのを選んで!」そんな元気な声があがりました。なるほど、どの作品も良さそうです。自分も頑張ったし、一番いいのはどれなんだろう。そんな素直な気持ちから出てきた言葉でした。そんな風にいいものから吸収して頑張ろうという気持ち、応援したいなと思います。でもアトリエでの考え方はちょっと違います。子ども達一人一人の感性や考え方、表現の仕方や目的も違う中で、1つのものさしで測って1番を決めることはできません。なぜなら、アトリエでは「今回はすごいのができたぞ。」も「今回はうまくいかなかったな。」という体験も、その両方は同じ価値の体験で優劣はないと考えているからです。何かを生み出そうと実際にやってみること、そのこと自体に大きな価値があるのです。

《私がアトリエで教えたいこと》

 私がアトリエをやっていて目指していることは、子ども達が自己表現を楽しんでできるようにする事です。自分の表現に自分で価値を見出す事ができるようになって欲しいと思っています。そして、自分の自己表現の自由と同じように、相手の自己表現の自由と価値も認めることです。その価値観を持って自分の周りを見わたすことが出来たら、この世界はもっとずっと豊かで美しいものになると信じています。美術教育を学んでいる時「図工美術って結局何を教えればいいのだろう。」そんなことをいつも考えていました。その答えが今の私にっとては前述のことなのです。美術を英語にすると「Art」です。美・術だと「Art Technique」。だけど私にとっての美術は、世界が豊かで美しいものに見える魔法「Beautiful Magic」なんです。このアトリエに来てくれている子ども達がいつか絵や工作から離れていったとしても、自分の表現も相手の表現も価値あるものだと認めるというこの魔法を持っていれば、きっと人生を豊かにしてくれると思うのです。

《絵画展の受賞作品はいい絵?選ばれなかった絵はよくない絵?》

 6・7月は「みつばちの一枚絵コンテスト」に挑戦します。しかし様々な絵画展の基準とする事と、このアトリエの基準とする絵画に対する価値観は違います。チャレンジする上で知っておいて欲しいことがあります。

 作品の価値は1つの基準で測ることはできません。独創性・色彩・構成力・分かりやすさ・緻密さ‥どの様な価値基準で見るかによって大きく変動するものです。たとえば、ピカソとルノワールの作品を並べてどちらが好きかという議論はできても、どちらがいい絵か議論する事は意味のない事だとわかると思います。なぜなら2人の表現の違いは上手いか下手かの違いではなく何をどのように表現するか(つまり価値基準)が違うからです。しかし、コンテストや絵画展など優劣をつけなくてはならない時、この価値基準を非常に狭い基準にする必要があるのです。沢山の作品からほんの少しの作品を選ばなければならないからです。そしてコンテストの目的や趣旨(価値基準)を熟知している審査員の方の目に触れる前の段階で、ふるい落とされてしまう作品の中には、選定員の未熟な経験則や好みによって選考から外されてしまうものも残念ながら存在します。またどんなに絵画的に素晴らしい作品でも、昨年の受賞作にたまたま似ていたとか、ポスターには向かないとか、明るさ、子どもらしさ等、そのコンテストだけの基準で選定から外れてしまうものもあるのです。

ですから選ばれなかった絵はいい絵じゃないなんて事は絶対にありません。それだけは絶対に忘れないで下さい。そのコンテストの基準には合わなかった。それだけのことです。コンテストにはどうしても狭められた価値基準を設けなければなりません。しかし、本来の表現活動は好きなものを好きな様に描いていい。自分の良いと思う表現を探し、高めていくことに意味があるものなのです。

 コンテストの良いところもあります。まず沢山の人の目に触れることを意識して制作するという経験、参加してみる事で新たな視点を持つ事もできます。もし入選することに恵まれたら、それは大きな成功体験となって自信になるということです。沢山の条件をかいくぐって誰かの目に止まったということは本当に自信を持っていいことだと思います。

また今回はミツバチについてですが、コンテストの趣旨に基づいた環境や人権、家族など描くにあたって様々な学びを得ることができるという点もいいことの一つだと思います。今回も子ども達とみつばちについて調べる中で驚くことが本当に沢山ありました。女王蜂の誕生や、働きバチのダンス、蜜蝋がどうやって蜂の体から出てくるのか、知らなっかった事に触れることは純粋に喜びの体験でした。

選ばれたら嬉しい!そうだよね。だけど選ばれなかったら気にしない!!それも一生懸命な子ほど難しいかもしれませんが「私の表現はこの絵画展には理解が追いつかなかったのね~」そんな風に思ってみていいと思います。今回の挑戦も楽しんでいい経験にしましょう。絵画展に関しては私も迷いや言いたいこと沢山あるのです……次回に続く。

過去記事・《同じ手順でを同じものを描く指導。写真を見て描いてもいいの?》

6月のテーマ

「ミツバチの1枚画」コンテスト

 月曜クラス 7・14・21

 火曜クラス 8・15・22

 水曜クラス 9・16・23

7月の予定

月(にじ,ふね)5・12・1

火(くも,うみ)6・13・20

水(なみ)7・14・21